5)タツオ~1

2018/01/22 13:00
「ちょっと話があるんだけど……」と話しかけられて真昼が振り向くと、 アルバイト仲間の男子学生のYが立っていた。 驚いたのは隣の区でも有名な進学高の霜降りの制服だった。 「あ、コレ?今日は補修があって……」 中3の時、担任教師から薦められた受験校よりも偏差値の高い進学校の制服。 「ホント、制服着るのってイヤなんだけどね」とYはズボンの裾をパンパンと叩く。 「あの、沢木さん」とYは直立不動になり、真昼の顔を正面から見下ろすカタチになった。 1学年下って聞いていたけど..

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4)赤いランドセル

2018/01/11 13:42
転校生のペールブルーのランドセルに真昼は心を奪われた。 男の子は黒、女の子は赤と決まっていたかのようにそれまでは目にしたこともない色。 横浜から来たその女の子は異常に色が白く吹き出物だらけの肌をしていた。 髪はショートで後ろを刈り上げ、スカートを履いていなければ男の子と間違えそうだった。 真昼はその子から話しかけられるたびにランドセルに興味がいった。 真昼は以前から不思議に思っていたのだ。 赤が苦手というよりもなぜ女の子は赤で男の子は黒なんだろう?と思っていたから..

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3)お母さんと呼べない

2018/01/08 12:51
「あなたなんかが受けるから私が落ちちゃったじゃない!」 凄い剣幕で真昼に喰ってかかったのはクラスで一番背が高い女子だった。 男子生徒には猫撫で声で話すくせに、女子には上から目線のただ体育だけが得意な女子だった。 真昼はこの頃、清子とこの女子生徒の中に女の嫌らしさを見ていた気がする。 こういう女だけにはなりたくないと真昼の中では黒い点がシミのように拡がった。 自分で望んだ事でもないのに数人のクラスメートにも同じことを言われた嫌な記憶がある。 今だったらクラスにはさま..

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2)父の涙

2017/12/29 08:37
祖母が可哀そうにと言って清子の留守に真昼を抱きしめてくれたことがある。 中学の入学式が終わってずっと経った頃だった。 祖母の部屋は玄関横にあり、清子とは反対にいつもきれいに整頓されていた。 祖母は清子のことをいつも下作だ下作だと言っていた。 最初は意味がわからなかったのだが、どうも下品だということだったらしい。 清子は手先が器用で自分の洋服はもちろん真昼や妹の服もよく縫ってくれた。 真昼の小学校の修学旅行に着ていったブレザースーツもそうだった。 二人でデパートへ..

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1)頬にかかる雪

2017/12/28 14:04
もう30分くらい清子を待っていた。 制服のネイビーコートに雪が絶え間なく落ちては消えていく。 雪はいつの間にか吹雪になろうとしていた。 クリスマスも過ぎ、今年最後の集金のために坂道を上っていく清子の後姿が遠くなる。 空き家の軒先で待っている真昼の足元に黒い猫がすり寄ってきた。 「ごめんね。何も持っていないの」と真昼は両手をポケットから出して見せた。 トパーズ色の瞳で真昼を一瞥し猫は去りかけたのだが、振り向いてじっとまた見つめてくる。 「ごめんね。ここ動けないの。..

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